分類階級について(Taxonomic rank)

分類階級(Taxonomic rank)とは、生物の分類において、その分類群がどの程度の階層に位置しているのかを表す指標です。

分類学の父、カール・フォン・リンネ(Carl von Linné)に因み、一般的にはリンネ式の階級(ドメイン)を指します。

これに加え、上(Super-)や亜(Sub-)などの接頭辞を使うことがしばしばあります(上科、亜科など)。

属より上の分類階級のことを高次分類群と呼びますが、これらは(属名と種小名の組み合わせである)狭義の学名とは関係ないためか、階級の設定はある程度自由で、分類学者の裁量に任されている一面があります(中には[Chase & Reveal (2009)]のように陸上植物(有胚植物)をトクサ綱(Class Equisetopsida)と低い階級に置く大胆な分類もあります(参考))。

ただ、分類階級とは歴史と伝統を重視した一面があり、一般的には哺乳類は綱、霊長類は目、という風に常識的な階級が定められています。

当サイトでは各分類階級について、独断と偏見を交えた、よもやま話をしていきます(より正確な解説は他サイトでも行われていますので、Go○gle先生に聞いてみてください)。

分類階級について(全て)
[接頭辞(上-・亜-など)なしのみ]
[基本的階級(ドメイン)のみ]

システム(System)

ラテン語ではシステマ(Systema)。

一般的な分類階級ではなく、使用例は(PHYLOGENIE DER LEBEWESEN - STEFAN HINTSCHE)でしか見つけられていませんが、当サイトでは広義の生物(ウイルスやプリオンなど非細胞生物を含む)全体(Biota)に対する分類階級として使用しています。

サブシステム(Subsystem)

ラテン語ではスブシステマ(Subsystema)。

システムの下位階級として使われます。当サイトでは細胞生物(Cellulata)と非細胞生物(Non-cellulata)を分けるのに使用しています。

帝(Empire)

ラテン語では(Imperium)。日本語では(てい)と呼ばれます。

界(Kingdom)より上の分類階級だから、王国(Kingdom)の上は帝国、という発想で名付けられたと思われます。

原核生物(Prokaryota)と真核生物(Eukaryota)を分けるために設けられた階級ですが、原核生物は単系統群ではないことが明らかになったため、現在では微妙な位置付けにあります。

なお、イタリア語Wikipediaでは、細胞生物(Cellulata)と非細胞生物(Non-cellulata)を分けるのにこの階級が使われています。

スーパードメイン(Superdomain)

ラテン語ではスペルレギオー(Superregio)。日本語では英語名のSuperdomainをそのままスーパードメインと片仮名で表記するのが一般的です(中国語由来の上域(じょういき)を使うこともあります)。

ドメインの上位階級で、3ドメイン説において、バクテリア(Bacteria)とアルカリア(Arkarya)(= アーキア + 真核生物)を分けるのに使われます。

なお、2ドメイン説(エオサイト説)だとドメインと同じになってしまうので当階級は通常使いません。

ドメイン(Domain)

ラテン語ではレギオー(Regio)。日本語では英語名のDomain(領域)をそのままドメインと片仮名で表記するのが一般的です(中国語由来の(いき)を使うこともあります)。

現在では必ず置かなければならない基本的階級の一つとして位置付けられることが多いです(8つあるうち1番上)。

カール・ウーズ(Carl Woese)が1990年に設けた階級で、2020年現在バクテリア(真正細菌)(Bacteria)、アーキア(古細菌)(Archaea)、真核生物(Eucarya)の3つに分ける3ドメイン説が主流です。

その他、アーキアの1系統から真核生物が進化したとする2ドメイン説(エオサイト説)も知られています。

ドメインが異なる生物は基礎的な遺伝子の構造が異なります(特にリボソームRNA)。そのためドメインごとにリボソーム阻害剤(生物に必要なタンパク質の合成を阻害する薬)が異なり、真核生物に効くリボソーム阻害剤はヒトにとって毒、バクテリア(真正細菌)に効くリボソーム阻害剤(ストレプトマイシンなど)は抗生物質として働いたりします。

余談ですがインターネットURLのドメインとは直接の関係はありません(領域という意味は同じですが)。

サブドメイン(Subdomain)

ラテン語ではスブレギオー(Subregio)。日本語では英語名のSubdomainをそのままサブドメインと片仮名で表記するのが一般的です(中国語由来の亜域(あいき)を使うこともあります)。

ドメインの下位階級で、例えば真核生物の内部分類であるアモルフェア(Amorphea)(= ユニコンタ(Unikonta))とバイコンタ(Bikonta)を分けるのに使われたりします。

国際原生生物学会(ISOP)[Adl et al. (2012)]は真核生物の分類に「クラスター(Cluster)」「スーパーグループ(Supergroup)」という分類階級相当の便宜上の名称を提唱しています。当階級はクラスターに相当することが多いですが、明確な基準はありません(ここのようにユニークなサブドメインの割り当て方もあります)。

余談ですがインターネットURL用語のサブドメインとは直接の関係はありません。

クラスター(Cluster)

国際原生生物学会(ISOP)[Adl et al. (2012)]が提唱している真核生物の分類における分類階級相当の便宜上の名称です。

スーパーグループの上位分類で、アモルフェア(Amorphea)、エクスカバータ(Excavata)、ディアフォレティケス(Diaphoretickes)の3つから成ります。詳細は細胞生物における真核生物の項を参照。

当階級はサブドメインに相当することが多いですが、明確な基準はありません(例えば当サイトではエクスカバータやディアフォレティケスを上界相当としています)。

Clusterには集団、群れといった意味があります。例えば星団のことをStar Clusterといいます。最近(2020年現在)では疫学の分野で使われることが多いようです。

スーパーグループ(Supergroup)

国際原生生物学会(ISOP)[Adl et al. (2012)]が提唱している真核生物の分類における分類階級相当の便宜上の名称です。

クラスターの下位分類で、アメーボゾア(Amoebozoa)、オピストコンタ(Opisthokonta)、エクスカバータ(Excavata)、SAR、アーケプラスチダ(Archaeplastida)の5つから成ります。詳細は細胞生物における真核生物の項を参照。

当階級は上界に相当することが多いですが、明確な基準はありません(例えば当サイトではSARやアーケプラスチダ(植物)を界相当としています)。

余談ですが、Supergroupには既に成功した有名ミュージシャン達が集まって結成した音楽グループ・バンドといった意味もあります。

上界(Superkingdom)

ラテン語では(Superregnum)。日本語では上界(じょうかい)と呼ばれます。

界の上位階級で、例えば真核生物の内部分類であるオピストコンタ(Opisthokonta)に当てはめられたりしています。

国際原生生物学会(ISOP)[Adl et al. (2012)]は真核生物の分類に「クラスター(Cluster)」「スーパーグループ(Supergroup)」という分類階級相当の便宜上の名称を提唱しています。当階級はスーパーグループに相当することが多いですが、明確な基準はありません。

余談ですが仏教用語の上界(天上界)とは関係はありません。

界(Kingdom)

ラテン語では(Regnum)。日本語では英語名のKingdom(王国)を意訳して(かい)と名付けられています。

必ず置かなければならない基本的階級の一つとして位置付けられています(8つあるうち上から2番目)。

元々動物と植物を分けるために設けられた階級であり、これを2界説と呼びます。

後に生物学の知見が高まってくると、3界説、4界説、5界説、6界説、8界説など様々な説が提唱されてきました。

現在では真核生物には動物界(Animalia)、植物界(Plantae)、菌界(Fungi)と原生生物由来のいくつかの界(アメーバ界(Amoebobiota)やSAR界(SAR)など)を設定する方法が主流です。但し分類学者によって様々な説があり、動物界・植物界・菌界以外は統一見解には遠いです。

原核生物(バクテリアとアーキア)については、かつてはモネラ界(Monera)が設定されていましたが、現在ではバクテリアは細菌界(Bacteria)の1界、アーキアはユーリアーキオータ界(Euryarchaeota)とプロテオアーキオータ界(Proteoarchaeota)の2界に分ける方法が提唱されています。

亜界(Subkingdom)

ラテン語では(Subregnum)。日本語では亜界(あかい)と呼ばれます。界の下位階級として使われます。

動物の場合、最大の亜界「左右相称動物亜界(Bilateria)」の他、海綿動物亜界(Spongiobiotina)、ヒドラ亜界(Hydrobiotina)など、いくつかの亜界が設定されます。ホロゾア(Holozoa)を動物界と定義する場合は、さらにコドシガ亜界(Codosigobiotina)などいくつかの亜界が加わります。

植物の場合、紅色植物(Rhodoplantae = Rhodophyta)、灰色植物(Biliphyta = Glaucophyta)、緑色植物(Viridiplantae)に亜界の階級を当てはめる分類がよく使われます。

なお、[Tedersoo et al. (2018)]では菌界の内部分類としてディカリア(二核菌)亜界(Dikarya)以外にもいくつかの亜界を提唱しています。詳細は菌界(Fungi)も参照。

下界(Infrakingdom)

ラテン語では(Infraregnum)。日本語では下界(かかい)と呼ばれます。亜界の下位階級として使われます。

動物の場合、左右相称動物亜界の前口動物(Protostomia)と後口動物(Deuterostomia)に下界の階級を当てはめる分類がよく使われます(下で述べていますが、枝(Branch)を当てはめる場合もあります)。

植物の場合、緑色植物亜界の緑藻植物(Chlorophyta)とストレプト植物(Streptophyta)を分けるのに使われています。

余談ですが仏教用語の下界(げかい)とは関係はありません。

枝(Branch)

界と門の間の階級として必要に応じて設けられることがあります。日本語では英語名のBranchを訳してと呼ばれます。(正確な読み方は分かりませんでした。し?)

当サイトでは使用していませんが、動物界の前口動物と後口動物に使用している例があります(きまぐれ生物学)。

上門(Superphylum/Superdivision)

ラテン語では(Superphylum/Superdivisio)。日本語では上門(じょうもん)と呼ばれます。

門の上位階級として使われます。同じ上門に所属する門は、互いに近縁だといえます。

動物の場合、例えば前口動物下界の冠輪動物と脱皮動物を分けるのに使われたりします。

植物の場合、ストレプト植物下界の有胚植物(陸上植物)(Embryophyta)に当階級を当てはめたりします。

なお、[Ruggiero et al. (2015)]ではSARスーパーグループのストラメノパイル(Stramenopiles)とアルベオラータ(Alveolata)にこの階級を設定しています。

門(Phylum/Division)

ラテン語では(Phylum/Divisio)。日本語では(もん)と名付けられています。

必ず置かなければならない基本的階級の一つとして位置付けられています(8つあるうち上から3番目)。

日本語では門で統一されていますが、英語名は動物/原核生物で(Phylum)、植物/菌類で(Division)と分けられています。但し最近では植物/菌類でも(Phylum)の使用が許されるようになってきているので、当サイトでは全生物の門に対して(Phylum)を使用しています。

Phylumの原義は古代ギリシアにおいて血縁によって決められた投票グループのこととされます。Divisionはそのものズバリ「分ける」という意味です。

動物の場合、慣例的に門は基本的な体制(ボディプラン)が同じものをまとめる分類となっています。脊索動物門(Chordata)、節足動物門(Arthropoda)、軟体動物門(Mollusca)が有名です。

なお、現在の動物門のほとんどは、古生代のカンブリア紀にほぼ出揃ったと考えられています。これをカンブリア爆発(Cambrian Explosion)と呼びます。

植物の場合、伝統的に門は被子植物(Angiospermae)、裸子植物(Gymnospermae)、シダ植物(Pteridophyta)などに当てはめられてきました。

最近では維管束植物(Tracheophyta)に門を当てはめる分類もあり、当サイトではこれを採用しています(この場合シダ植物などは階級を亜門に下げられるため、学名が(Pteridophytina)になったりします)。

亜門(Subphylum/Subdivision)

ラテン語では(Subphylum/Subdivisio)。日本語では亜門(あもん)と呼ばれます。門の下位階級として使われます。

動物の場合、最も有名な亜門は魚類・両生類・爬虫類・鳥類・哺乳類をまとめた脊椎動物亜門(Vertebrata)と思われます。

植物の場合、最も有名な亜門は裸子植物と被子植物をまとめた種子植物亜門(Spermatophytina)と思われます。

下門(Infraphylum/Infradivision)

ラテン語では(Infraphylum/Infradivisio)。日本語では下門(かもん)と呼ばれます。亜門の下位階級として使われます。

動物の場合、脊椎動物亜門の下位分類として、顎のある脊椎動物(顎口類)(Gnathostomata)に当階級を設定する例が見られます。

植物の場合、種子植物亜門の下位分類として、裸子植物(Gymnospermae)と被子植物(Angiospermae)に当階級を設定する例が見られます。

小門(Parvphylum/Parvdivision)

ラテン語では(Parvphylum/Parvdivisio)。日本語では小門(しょうもん)と呼ばれます。下門の下位階級として使われます。

基本的にあまり出番はありませんが、下門でも足りない場合に設定される場合があります(当サイトにおいてはアルベオラータ上門(Alveolata)内)。

上綱(Superclass)

ラテン語では(Superclassis)。日本語では上綱(じょうこう)と呼ばれます。

綱の上位階級として使われます。同じ上綱に所属する綱は、互いに近縁だといえます。

動物の場合、両生類・爬虫類・鳥類・哺乳類が所属する四肢動物上綱(Tetrapoda)や昆虫などが所属する六脚上綱(Hexapoda)が有名です。

植物の場合、あまり使いませんが[Ruggiero et al. (2015)]は裸子植物と被子植物にこの階級を当てはめています(但し非正式)。

綱(Class)

ラテン語では(Classis)。日本語では(こう)と名付けられています。

必ず置かなければならない基本的階級の一つとして位置付けられています(8つあるうち上から4番目)。

Classという単語は学級(クラス)という意味があったり、階級という意味があったりしますが、生物の分類においては門と目の間の階級として使われます。

動物の場合、リンネは哺乳綱(Mammalia)、鳥綱(Aves)、両生綱(爬虫類を含む)(Amphibia)、魚綱(Pisces)、昆虫綱(Insecta)、蠕虫綱(Vermes)の6綱に分類していました。

現在では哺乳綱と昆虫綱はそのまま、両生綱は爬虫綱(Reptilia)を分離した上で、鳥綱は爬虫綱の下位分類として(階級は亜綱または下綱に下げる)、使われています。

魚綱は側系統群であるため、いくつかの綱に分割されます(軟骨魚綱(Chondrichthyes)、条鰭綱(Actinopterygii)、肺魚綱(Dipnoi)など)。蠕虫綱は完全な多系統群であるため、現在では解体されています。

植物の場合、リンネは雄蕊の数や長さで24綱に分類していました(現在では使用されていません)。新エングラー体系やクロンキスト体系では被子植物は双子葉植物綱(Dicotyledoneae/Magnoliopsida)と単子葉植物綱(Monocotyledoneae/Liliopsida)の2綱に分類されます。

現在では被子植物はモクレン綱(Magnoliopsida)の1綱、裸子植物はソテツ綱(Cycadopsida)、イチョウ綱(Ginkgoopsida)、マツ綱(Pinopsida)、グネツム綱(Gnetopsida)の4綱に分類する方法が提唱されています。

亜綱(Subclass)

ラテン語では(Subclassis)。日本語では亜綱(あこう)と呼ばれます。綱の下位階級として使われます。

動物の場合、哺乳綱の原獣亜綱(Prototheria)・獣亜綱(Theria)、爬虫綱の鱗竜亜綱(Lepidosauria)・カメ亜綱(Testudinata)・主竜亜綱(Archosauria)などの例が見られます。

植物の場合、最近のAPG植物分類体系に基づく分類ではあまり使いません。当サイトでは被子植物(モクレン綱)の単子葉植物(Monocotyledoneae)・真正双子葉植物(Eudicotyledoneae)に亜綱の階級を当てはめています。

下綱(Infraclass)

ラテン語では(Infraclassis)。日本語では下綱(かこう)と呼ばれます。亜綱の下位階級として使われます。

動物の場合、哺乳綱の後獣下綱(Metatheria)・真獣下綱(Eutheria)、爬虫綱の鳥類(鳥下綱(Aves))などの例が見られます(鳥類については、亜綱に分類する場合もあります[Ruggiero et al. (2015)])。

植物の場合、この階級はほとんど使われません(当サイトでも使っていません)。

小綱(Parvclass)

ラテン語では(Parvclassis)。日本語では小綱(しょうこう)と呼ばれます。下綱の下位階級として使われます。

基本的にあまり出番はありませんが、下綱でも足りない場合に設定される場合があります(当サイトにおいては扁形動物門(Platyhelminthes)内)。

準綱(Subterclass)

ラテン語では(Subterclassis)。日本語では準綱(じゅんこう)と呼ばれます。下綱の下位階級として使われます。

基本的にあまり使われませんが、節足動物門 - 多足亜門の内部で、単顎準綱(Colobognatha)・真顎準綱(Eugnatha)の使用例があります。

小綱と同時に使われることはまずないためか、小綱とどっちが上の階級なのかよく分かりませんでした。

区/節(Cohort/Division)

ラテン語では(Cohort/Divisio)。綱と目の間の階級として必要に応じて設けられることがあります。

亜綱、下綱、上目など従来の接頭辞付き分類階級だけでは足りない場合に設けられることがある印象です。

鳥類/軟体動物/条鰭類の場合は()(Cohort)、軟骨魚類の場合は()(Division)、昆虫の場合は(せつ)(Division)など、分類群によって異なる呼ばれ方をされます。

門(Division)とややこしいため、植物や菌類ではDivisionはここの意味では使われないと思われます。

Cohortとは軍団(軍隊)や集団などの意味があり、これが転じて分類階級に使われたと思われます。Divisionは門の項でも述べましたが、分けるという意味です。

亜区/亜節(Subcohort/Subdivision)

ラテン語では(Subcohort/Subdivisio)。区/節の下位階級として使われます。

鳥類/軟体動物の場合は亜区(あく)(Subcohort)、魚類の場合は亜区(あく)(Subdivision)、昆虫の場合は亜節(あせつ)(Subdivision)など、分類群によって異なる呼ばれ方をされます。

巨目(Magnorder)

ラテン語では(Magnordo)。日本語では巨目(きょもく)と呼ばれます。上目の上位階級として使われます。

基本的にあまり使われませんが、哺乳綱の北方真獣類(Boreoeutheria)にこの階級を当てはめることがあります。

上目(Superorder)

ラテン語では(Superordo)。日本語では上目(じょうもく)と呼ばれます。

大目の上位階級、巨目の下位階級として使われます。同じ上目に所属する目は、互いに近縁だといえます。

動物の場合、哺乳綱のアフリカ獣上目(Afrotheria)・異節上目(Xenarthra)・真主齧上目(Euarchontoglires)・ローラシア獣上目(Laurasiatheria)などの例が見られます。

植物の場合、被子植物(モクレン綱)のモクレン上目(Magnolianae)・ユリ上目(Lilianae)・バラ上目(Rosanae)・キク上目(Asteranae)などの例([Chase & Reveal (2009)])が見られます。

大目(Grandorder)

ラテン語では(Grandordo)。日本語では大目(だいもく)と呼ばれます。中目の上位階級、上目の下位階級として使われます。

哺乳綱の分類で使われ、後獣下綱(有袋上目)のアメリカ有袋大目(Ameridelphia)・オーストラリア有袋大目(Australidelphia)、真主齧上目の真主獣大目(Euarchonta)・グリレス大目(Glires)などの例が見られます。

余談ですが、英語名のGrandorderは某有名ゲームとは全く関係ありません。

中目(Mirorder)

ラテン語では(Mirordo)。日本語では中目(ちゅうもく)と呼ばれます。目の上位階級、大目の下位階級として使われます。

基本的にあまり使われませんが、哺乳綱 - 真主齧上目 - 真主獣大目の内部で、霊長形中目(Primatomorpha)の使用例があります。

系(Series)

ラテン語では(Series)。日本語では(けい)と呼ばれます。

魚類(軟骨魚綱/条鰭綱)の分類で見られ、上目と目の間の階級として使われます。

役割が大目(Grandorder)あたりと被っていますが、どちらが上位の階級なのかは不明です。

Seriesとは系列とか、類似の性質や関係に基づくつながりといった意味があります。

亜系(Subseries)

ラテン語では(Subseries)。日本語では亜系(あけい)と呼ばれます。

魚類(条鰭綱)の分類で見られ、系の下位階級として使われます。

役割が中目(Mirorder)あたりと被っていますが、どちらが上位の階級なのかは不明です。

目(Order)

ラテン語では(Ordo)。日本語では(もく)と名付けられています。

必ず置かなければならない基本的階級の一つとして位置付けられています(8つあるうち上から5番目)。

Orderという単語は注文、命令といった意味があったりしますが、生物の分類においては綱と科の間の階級として使われます。

動物の場合、霊長目(Primates)、食肉目(Carnivora)、齧歯目(Rodentia)、鯨偶蹄目(Cetartiodactyla)、スズメ目(Passeriformes)、有鱗目(Squamata)、鱗翅目(Lepidoptera)などがよく知られています。

植物の場合、モクレン目(Magnoliales)、バラ目(Rosales)、キク目(Asterales)、ユリ目(Liliales)、イネ目(Poales)、マメ目(Fabales)、マツ目(Pinales)などがよく知られています。

近年(1980年代以降)、日本において哺乳綱の目名に従来からある名前ではなく、代表する動物の名前を当てる改定が行われていますが(「霊長目→サル目」、「食肉目→ネコ目」など)、代表する動物の名前を目の範囲にまで広げることには違和感もあり、異論も多いです(また、これらの代表する動物の名前はラテン語名とも関係がない)。

(ヒトがサル目というのも少し違和感がありますが、イヌがネコ目というのは、イヌ派にとっては複雑な気分かと思われます…。)

亜目(Suborder)

ラテン語では(Subordo)。日本語では亜目(あもく)と呼ばれます。目の下位階級として使われます。

動物の場合、霊長目の曲鼻猿亜目(Strepsirrhini)・直鼻猿亜目(Haplorhini)、食肉目のネコ亜目(Feliformia)・イヌ亜目(Caniformia)などの例が見られます。

植物の場合、この階級はほとんど使われませんが、ソテツ目のソテツ亜目(Cycadineae)・ザミア亜目(Zamiineae)の使用例があります。

下目(Infraorder)

ラテン語では(Infraordo)。日本語では下目(かもく)と呼ばれます。亜目の下位階級として使われます。

動物の場合、直鼻猿亜目のメガネザル下目(Tarsiiformes)・真猿下目(Simiiformes)、イヌ亜目のイヌ下目(Cynoidea)・クマ下目(Arctoidea)、鯨偶蹄目のクジラ下目(Cetacea)などの例が見られます。

(クジラ下目はかつては目階級でした(クジラ目(Cetacea))。)

植物の場合、この階級はほとんど使われません(当サイトでも使っていません)。

小目(Parvorder)

ラテン語では(Parvordo)。日本語では小目(しょうもく)と呼ばれます。下目の下位階級として使われます。

下目でも足りない場合に設定される場合があります。

真猿下目の広鼻小目(Platyrrhini)・狭鼻小目(Catarrhini)、クジラ下目のヒゲクジラ小目(Mysticeti)・ハクジラ小目(Odontoceti)などの例が見られます。

上科(Superfamily)

ラテン語では(Superfamilia)。日本語では上科(じょうか)と呼ばれます。

外科の上位階級として使われます。同じ上科に所属する科は、互いに近縁だといえます。

動物の場合、ヒト科・テナガザル科が所属するヒト上科(Hominoidea)やネコ科・オビリンサン科が所属するネコ上科(Feloidea)などの例があります。

植物の場合、この階級はほとんど使われません(当サイトでも使っていません)。

外科(Epifamily)

ラテン語では(Epifamilia)。日本語では外科と呼ばれます。(正確な読み方は分かりませんでした。がいか?げか?)

科の上位階級、上科の下位階級として使われます。

基本的にあまり使われませんが、蜚蠊(ひれん)目(ゴキブリ目)のシロアリの仲間をシロアリ外科(Termitoidae)と分類する場合があります(従来の分類階級を変更しなくて済むため。(参考))。

(診療科の外科(げか)(surgery)とは関係はありません。)

科(Family)

ラテン語では(Familia)。日本語では()と名付けられています。

必ず置かなければならない基本的階級の一つとして位置付けられています(8つあるうち上から6番目)。

Familyという単語の意味は言わずと知れた「家族」です。生物の分類においては目と属の間の階級として使われ、分類階級の中では高い知名度を誇ります。

動物の場合、ヒト科(Hominidae)、ネコ科(Felidae)、イヌ科(Canidae)、クマ科(Ursidae)、ウシ科(Bovidae)、スズメ科(Passeridae)、トカゲ科(Scincidae)など、知名度の高い科がいくつも存在します。

植物の場合、バラ科(Rosaceae)、キク科(Asteraceae)、ユリ科(Liliaceae)、イネ科(Poaceae)、マメ科(Fabaceae)、ミカン科(Rutaceae)、マツ科(Pinaceae)など、知名度の高い科が多く存在します。

なお、属より上の分類階級(高次分類群)の学名はローマン体で表記します(イタリック体(斜体)または下線付きで表記することはない)。先頭のみ大文字で表記します。

余談ですが診療科(内科、外科、眼科、耳鼻咽喉科など)や学科(文学科、法学科、工学科、医学科など)とは直接の関係はありません。

亜科(Subfamily)

ラテン語では(Subfamilia)。日本語では亜科(あか)と呼ばれます。科の下位階級として使われます。

動物の場合、ヒト科のオランウータン亜科(Ponginae)・ヒト亜科(Homininae)、ネコ科のヒョウ亜科(Pantherinae)・ネコ亜科(Felinae)などの例が見られます。

植物の場合でもこの階級は設定されることが多く、バラ科のバラ亜科(Rosoideae)、キク科のキク亜科(Asteroideae)などの例があります。

下科(Infrafamily)

ラテン語では(Infrafamilia)。日本語では下科(かか)と呼ばれます。亜科の下位階級として使われます。

理論上存在する階級ですが、実際に使われることはあまりありません(族/連の方がよく使われる)。

族/連(Tribe)

ラテン語では(Tribus)。科と属の間の階級として必要に応じて設けられることがあります。

亜科など従来の接頭辞付き分類階級だけでは足りない場合に設けられることがある印象です(下科や上属などは通常あまり使いません)。

英語ではTribeで統一されていますが、日本語名は動物で(ぞく)、植物で(れん)と使い分けられています。

Tribeとは部族とか氏族などといった意味があります。その意味では族の訳語は間違っていないのですが、Genusの属と発音が同じ(ぞく)でややこしいため、動物でも連が使えたらいいのに、と思うこともあります(暴論)。

亜族/亜連(Subtribe)

ラテン語では(Subtribus)。族/連の下位階級として使われます。

英語ではSubtribeで統一されていますが、日本語名は動物で亜族(あぞく)、植物で亜連(あれん)と使い分けられています。

上属(Supergenus)

ラテン語では(Supergenus)。日本語では上属(じょうぞく)と呼ばれます。属の上位階級として使われます。

理論上存在する階級ですが、実際に使われることはあまりありません(亜族/亜連の方がよく使われる)。

属(Genus)

ラテン語では(Genus)。日本語では(ぞく)と名付けられています。

必ず置かなければならない基本的階級の一つとして位置付けられています(8つあるうち上から7番目)。

Genusという単語は元々「類」という意味があったりしますが、生物の分類においては科と種の間の階級として使われます。

属が同じ生物はかなり近縁であるといえます(外見も似ていることが多いです)。ヒトはヒト属(Genus Homo)です。

全ての生物には学名(binominal name or scientific name)が付けられていますが、これはラテン語における属名と種小名の組み合わせとなります(例:Homo sapiens)。属名は同じ文章で2回目以降短縮可能です(例:H. sapiens)。

なお、属名と種小名はイタリック体(斜体)または下線付きで表記しなければならないとされます(亜種名以下も)。属名・亜属名は先頭のみ大文字、種小名・亜種名以下は全文字小文字で表記します。

同じ界の生物で属の名前(ラテン語の学名)が重複することは許されません。異なる界(例えば動物と植物)の生物の間においては属名が重複することもあります。

亜属(Subgenus)

ラテン語では(Subgenus)。日本語では亜属(あぞく)と呼ばれます。属の下位階級として使われます。

1つの属に所属する種が多い場合などで設定される場合があります。ヒトの場合は特に亜属は設定されていません(そもそもヒト属の現生種はサピエンス種しかいない)。

例を挙げると、膜翅目ミツバチ科ミツバチ属(Genus Apis)のミツバチ亜属(Subgenus Apis)・オオミツバチ亜属(Subgenus Megapis)・コミツバチ亜属(Subgenus Micrapis)があります。

学名の表記方法は、セイヨウミツバチ(Apis (Apis) mellifera)のように亜属名を括弧()で囲みます。亜属名もイタリック体(斜体)または下線付きで表記します。

((Apis (Subgen. Apis) mellifera)のように亜属名の前にSubgen. を付けることもあり(省略可)。Subgen. とはSubgenusの略で、イタリック体(斜体)または下線付きにはしない。)

なお、亜属名は省略可能です(そもそも亜属が設定されていない生物も多い)。

節(Section)

ラテン語では(Sectio)。日本語では(せつ)と名付けられています。

植物において、属と種の間の階級として必要に応じて設けられることがあります。動物では通常使いません。

(動物で使ってしまうと、特に昆虫の節(Division)と紛らわしい…。)

亜節(Subsection)

ラテン語では(Subsectio)。日本語では亜節(あせつ)と名付けられています。

植物において、節(Section)の下位階級として使われます。動物では通常使いません。

上種(Superspecies)

ラテン語では(Superspecies)。日本語では上種(じょうしゅ)と呼ばれます。種の上位階級として使われます。

基本的にあまり使われませんが、研究の結果、それまで1つの種と思われていたものが複数の種に分割された時、以前の種がこの階級に設定されることがあります。

例を挙げると、スズメ目メボソムシクイ科メボソムシクイ属のメボソムシクイ(Phylloscopus borealis)が、研究の結果、メボソムシクイ(P. xanthodryas)・オオムシクイ(P. examinandus)・コムシクイ(P. borealis)の3種に分割されました(参考1参考2参考3)。

この場合のそれまでの種(旧:メボソムシクイ)を、メボソムシクイ上種(Superspecies borealis)と呼びます。(学名表記ですと(P. borealis s. l.)となります。s. l. とはsensu latoの略で「広義」の意味。)

種(Species)

ラテン語では(Species)。日本語では(しゅ)と名付けられています。

必ず置かなければならない基本的階級の一つとして位置付けられています(8つあるうち上から8番目、つまり1番下)。

Speciesという単語は「種類」といった意味があります。生物の分類においては属の下、基本的な単位となっています。

現在では数百万の種が見つかっています。但し実際にはその数倍から数十倍の種が存在すると推測されています。

ヒトはサピエンス種(Species sapiens)です。(但し通常、種小名は属名とセットで表記します。種小名のみを単独で表記することはありません。(例:Homo sapiens))

動植物の大半のように有性生殖を行う生物においては、有性生殖が行える個体同士が同一種という扱いになります(別種間でも交配が行える例外あり。例えばライオンとトラの雑種ライガー、ニホンザルとアカゲザルの交雑など)。

原核生物(バクテリアやアーキア)のように無性生殖を行う生物の場合は、種の概念が有性生殖生物と異なってきてしまいます(16S rRNA系統解析やDNA-DNA分子交雑法などを使う)。原核生物の種はかなり大きなくくりと思われ、動植物の目レベルに相当するとも言われています。

種に関してはかのチャールズ・ダーウィン(Charles Darwin)による名著、種の起源(On the Origin of Species)が有名です。

余談ですが「スピーシーズ(Species)」「種の起源」というキーワードからは某有名ホラー映画が連想されます…。

亜種(Subspecies)

ラテン語では(Subspecies)。日本語では亜種(あしゅ)と呼ばれます。種の下位階級として使われます。

別種とするほどの違いはないが、異なる特徴を有する集団が存在する場合があり、これを亜種とする場合があります(亜種と認定するのに明確な基準があるわけではありません)。

分かりやすい例として、タイリクオオカミ(Canis lupus)の亜種、イエイヌ(C. l. familiaris)が有名です。

ちなみに現生人類はホモ・サピエンス唯一の亜種、(Homo sapiens sapiens)とされます。人種や民族などに関わらず、全て同一亜種です。

学名の表記方法は、種小名の後に続けて表記します。イエイヌなら(Subspecies familiaris)が亜種名です(種小名同様、単独で表記しません。属名・種小名とセットで表記します)。なお、亜種名は省略可能です。

(亜種名の前にssp. またはsubsp. を付けることもあり(省略可)。これらはSubspeciesの略で、イタリック体(斜体)または下線付きにはしない。)

変種(Variety)

ラテン語では(Varietas)。日本語では変種(へんしゅ)と呼ばれます。

植物において、亜種の下位階級として使われることがあります。動物では通常使いません。

例として、アブラナ目アブラナ科アブラナ属のブラッシカ・ラパ(Brassica rapa)という種は様々な変種が存在することで知られています。アブラナ(B. r. var. nippo-oleifera)、ハクサイ(B. r. var. pekinensis)、カブ(ヨーロッパ系:B. r. var. rapa)(アジア系:B. r. var. glabra)などが有名です。

学名の表記方法は、種小名の後に(亜種名がある場合はさらにその後ろに)続けて表記します。亜種名との区別のため、変種名の前にvar. を付けます(var. はVariety(Varietas)の略。イタリック体(斜体)または下線付きにはしない)。

亜変種(Subvariety)

ラテン語では(Subvarietas)。日本語では亜変種(あへんしゅ)と呼ばれます。

植物において、変種の下位階級として使われることがあります。動物では通常使いません。

例として、アブラナ目アブラナ科アブラナ属のブラッシカ・ラパ(Brassica rapa)という種には、ミカワシマナ(B. r. var. toona)という変種が存在しますが、さらにその亜変種としてヒロシマナ(B. r. var. toona subvar. hiroshimana)が知られています。

学名の表記方法は、種小名の後に(亜種名・変種名がある場合はさらにその後ろに)続けて表記します。亜種名・変種名との区別のため、亜変種名の前にsubvar. を付けます(subvar. はSubvariety(Subvarietas)の略。イタリック体(斜体)または下線付きにはしない)。

品種(Form)

ラテン語では(Forma)。日本語では品種(ひんしゅ)と呼ばれます。

植物において、亜変種の下位階級として使われることがあります。動物では通常使いません。

学名の表記方法は、種小名の後に(亜種名・変種名・亜変種名がある場合はさらにその後ろに)続けて表記します。亜種名・変種名・亜変種名との区別のため、品種名の前にf. を付けます(f. はForm(Forma)の略。イタリック体(斜体)または下線付きにはしない)。

なお、「品種」という用語を使っていますが、イヌの品種(犬種)(シェパード、チワワ、柴犬など)などとは関係ありません。

また、植物の栽培品種(あるいは園芸品種)(Cultivar)はまた別の概念(ふじ(リンゴ)、コシヒカリ(イネ)などが有名)で、ここで説明している品種(Form)とは関係ありません。

亜品種(Subform)

ラテン語では(Subforma)。日本語では亜品種(あひんしゅ)と呼ばれます。

植物において、品種の下位階級として使われることがあります。動物では通常使いません。

学名の表記方法は、種小名の後に(亜種名・変種名・亜変種名・品種名がある場合はさらにその後ろに)続けて表記します。亜種名・変種名・亜変種名・品種名との区別のため、亜品種名の前にsubf. を付けます(subf. はSubform(Subforma)の略。イタリック体(斜体)または下線付きにはしない)。


解説文更新:2020年03月21日(2020年06月12日改訂)

参考




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